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I Love Apples

デスノな日々

2024'11.24.Sun
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2007'04.03.Tue
平安死帳絵巻
 巻四  闇


ひたひたと、黒い影が、京の夜道をゆく。
都といえど、月の光も差さぬ闇夜は暗い。
だが、かつて何度も歩いたこの道を、迷うことはない。
もうすぐだ。
もうすぐ、おまえに裁きを下してやる。
闇の中で、怪しく瞳が光る。
遠くで野良犬の遠吠えが聞こえる。


検非違使庁の牢屋の中。
「綺羅が来る」
と竜崎が言ったきり、動きはない。
顔色の悪い陰陽師はとんとん、と裸足で床を踏みしめると、再び紙で出来た人形に戻った式神を懐に仕舞った。
松田は不自由な姿勢のまま、引き攣った笑いを陰陽師に向けた。
「…や…やだな竜崎、脅かさないでくださいよ…何も来ないじゃないですか」
し、と竜崎は唇に指を立てた。
足音がする。
いや、それは足音、ではない。
ひたひたと、なにものかが近づく、気配だ。

何があっても絶対に喋らないでください。
竜崎は松田に耳打ちして、素早く物陰に退いた。

ひた。ひた。ひた。
ぴたり。
と闇を引き摺るようなその気配は、牢の前で、止まった。
冷たい水のような空気が、闇が、毛穴からぞうっと染みこんでくる。
がちゃり、と鍵が外れる音がして、それは現れた。

黒の袍。単。指貫袴。
黒の冠を正し、恭しく巻物を捧げたその男は、鬼、と呼ぶにはあまりに整然としすぎている。
松田は安堵した。
この装束は、検非違使庁に仕える文官のもの。恐らくは、罪人を取り調べに来たのであろう。綺羅ではない。
そもそも、松田の姿は竜崎のかけた呪によって見えなくなっている筈。
しかし、闇をまとったような黒衣の官吏は、一歩進んで足を止めた。
「…ほう」
冷ややかな目で松田を見下ろすと、にやり、と口の端が裂けた。
「姿隠しの術か。…つまらぬ呪い師のよく遣う手よ」

見えている。
人とは思えぬ邪悪な笑みに、粟立つような鳥肌がざあっと全身を駆けめぐった。
やはり、これは鬼。
「そんな呪でわたしの目が欺けると思ったか。…愚かな」
思わず顔をあげると、鬼と目があった。漆黒の闇のように暗く冷たい瞳が松田を見据える。金縛りにあったように、身体の自由が効かない。松田の額に汗が浮かんだ。
竜崎の呪は全く効果がなかったのか。
考えてみれば、あんな馬鹿ばかしい写経ぐらいで姿が見えなくなる訳がないのだ。
呪いなんてものを信じた自分が馬鹿だった、と松田は心の中で己と竜崎を呪った。

「おまえの名は」
鬼の問いかけに、松田はわななく唇を必死で固く閉ざした。
「…答えぬか。それとも恐怖で舌すら凍り付いたか」
額から脇から冷たい汗がいくすじも滝のように流れ落ちる。
鬼はそれを見て、ふん、と笑った。
「この程度で青くなる小者が綺羅を騙ったか」
下衆めが、と吐き捨てる。
「よかろう。おまえの名など、訊かずともわかる。神仏より授かりしこの眼で見ればたちどころに、な」
鬼は手にした巻物をさらりと広げ、恭しく奉じた。
眼が、禍々しい光を放ち金色に輝いた。
「削除」





まだまだ続くよ!




*******************
えー、照でした(笑)
綺羅様を期待された方すんません。
せっかく平安京なので地元民・照を出さない手はない!
と召還してまいました。
すみません…

今回ちょっと短いですが、とにかく書けたところまでUP。
ますます行き当たりバッタリになってきましたが(滝汗)、まだ続きます。
あと、5話くらい?の予定です…汗汗


…え、ちょっと待て。
そろそろマジで原稿やらないとすぱこみ、マズ?
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2007'03.28.Wed

平安死帳絵巻
 巻三 写経      *微妙にえっちぃ警報発令中


綺羅が、捕らわれた。
瞬く間にその噂は京中を駆けめぐった。
しかも、娘を襲い金品を強奪し逃げようとしたところを、検非違使に捕らわれたという。
綺羅への信仰は、瞬く間に失望へと変わった。
その失墜を、顔を顰めて眺めていた者が、宮中に居た。


黴臭い湿った空気が澱んでいる。
検非違使庁の牢の一つ。
そこに、検非違使少尉松田が転がって居た。
後ろ手に戒められ、松田は検非違使としてではなく罪人として牢に放り込まれていた。
単衣一枚の惨めな姿で、髪は乱れ、烏帽子も取り上げられている。

申の刻が過ぎた頃、だったか。
忽然と牢の中に姿を現したのは、二人の童子を伴った陰陽師だった。
「松田さん、大丈夫ですか」
「り、竜崎」
松田は不安と疲労で困憊した顔をあげた。
「大丈夫じゃないですよ。もう死にそうです…」
「なるほど、大丈夫なようですね。では始めましょうか」
竜崎は傍らの童子に命じると、筆と硯を用意させた。
くろぐろと墨を含ませた筆を片手に、ふわり、と直衣の袖を返して松田の前に座り込む。
「脱いでください」
「え、ちょっと待っ…竜崎、ああっ、何するんですか」
松田は悲鳴をあげた。
竜崎が有無を言わさず、松田の着物の前をはだけたのである。
抵抗しようにも両手は後ろできつく縛られ、指一本動かせない。
しかも、二人の童子が両脇から身体を押さえつけている。子供だというのに、信じられないくらいの力だ。
いや。これは子供ではない。式神である。
(ああ母上…すみません…)
松田は目を閉じた。

「何考えてるんですか松田さん」
竜崎のうんざりしたような声に、松田は我に返った。
「勝手に妄想しないでください。まじない、ですよ。これからあなたの身体に、怨霊よけの呪を書くんです」
「…怨霊よけ?」
「今夜、綺羅が松田さんを殺しにやってきます」
松田はひっと声にならない悲鳴をあげた。
「松田さんは婦女暴行強盗殺人の重罪人です。しかも綺羅の名を騙って捕らえられた。これを潔癖な綺羅が許すわけがない。必ず松田さんを殺し、松田さんが綺羅ではないという証をたてに来るでしょう」
そこを捕らえます、と竜崎は言った。
「…じゃあ、僕は囮…」
「そういうことです」
竜崎は頷いた。
「しかし、それで松田さんが殺されてしまってはあまりに申し訳ないので、松田さんの本当の姿が綺羅から見えぬよう、呪をかけます」
「呪…」
「全身に経文の文字を書きます」
姿隠しの術。
松田は、ようやく合点した。
竜崎が策があると言っていたのは、これだったのだ。
式神を気味悪がる松田にとっては、呪も怪しいものに変わりはない。
出来ればそんなものに関わりたくはない。
しかし、事ここに至っては陰陽師に頼るより他に助かる途はなかった。
松田は、観念した。


ぶつぶつと呪文を唱えながら、竜崎はさらさらと松田の額に筆を走らせる。
薄皮一枚の上でまるで生き物のように筆がうごめく。
「…くすぐったいです、竜崎…」
「我慢してください。動くと文字が乱れて、呪になりませんよ?」
ぴしりと言って、竜崎は再び筆を構えた。
最初は額。頬。顎。首。肩。腕。背。胸。腹。
竜崎の手によって次々と松田の浅黒い肌に呪の文字が鮮やかに浮き上がる。
文字という紋様によって彩られる肌は異様でもあり、また美しくもあった。
その紋様を描き出す竜崎の動きもまた、舞うような美しさがある。
墨を含んだ筆が皮膚の上を滑る。
竜崎の息遣いを、感じる。
「…あ」
松田は思わず声をあげた。
「何、今の声」
「変な声」
式神たちは互いに顔を見合わせてから竜崎を見上げた。
「弐亜、芽呂。もういいですよ」
竜崎が言うが早いか童子の姿は消え失せ、二枚の人形だけがひらひらと松田の腹の上に舞い落ちた。
「松田さん」
竜崎はじろりと松田を見下ろした。
「こんなことでいちいち感じないでください。気が散ります。式神の教育にも悪影響を及ぼします」
「…すみません…」
松田は下を向いて自分でも赤くなった。
それについて竜崎が全く意に介さないのが、かえって恥ずかしい。
「まあ我慢しろと言っても無理かもしれませんが。生理現象ですからね」
「……あっ。そ、そんなとこまで…っ。あ、そっ、そこは竜崎、さすがに…だ、だめです。自分で書きますっ」
「綺羅に引っこ抜かれたいんですか?」
「…いえ、お願いします」
もはや、今の松田は全てをこの陰陽師に委ねるしかなかった。

やがて足指の先まで経文を書き終えると、口内で呪文を唱えて筆を置いた。
「終わりました」
竜崎は立ち上がり衣の裾をはらった。
「松田さん。単衣を着てください」
「そう言われても…」
手は縛られたままで動かせない。
竜崎は軽く舌打ちしてふたりの式神を呼び出すと、松田に着物を着せてやるよう命じた。
「急いでください。弐亜、芽呂」
竜崎は黒目を左右にせわしなく動かして、親指の爪をがりっと噛んだ。
「来ます」
牢の空気が、変わった。




つっづくぅ~!


*****************************************
ヤッターしくだい消化~!
写経される人が竜崎でなく松田になっちゃいましたけどね…
竜崎にもしたかったんですけどね…!ちょっと尺が足りなかったです。
全身写経のLはエロくていいと思いますが、松田は絵的に見たくないので字でちょうどいいです。
(ハ!この話、絵巻といいつつ絵がない…字巻だ…!)
あとはオチをつけるだけ…
ってそれが一番しんどいやんか。ヨーコ★さん、恨むわ!笑
っていうか自分ノリすぎですか。
せっかくのエロシーンがただのギャグになってしまいました。
re;liteのセリコさんのとこみたく美しくも怪しくエロスな感じにしたかったのに…はぁぁ…
平安の趣ふか~い「おかし」のムードが水の泡です。


あ、今日から友達がしばらく泊まりにくるので、ネットできるかどうか…
早く寝てくれればいいのですが…
むう…難しいな…続きは友達が帰ってからです。
…というか、スパコミの原稿ってどうなるんだ私。

2007'03.27.Tue
平安死帳絵巻
 巻二 鬼


ひたひたと夜の闇を、馬に乗った男がゆく。傍らには御徒の小者を一人、連れている。
馬上でふらふらとしているのは、酔っているのか。
大きな声では言えない場所からの帰りのようだ。
「待て」
声がして、男は馬上で振り返った。
「刑部卿藤原多貴邑だな」
「…お、おまえは…」
綺羅だ。
そう答えて鬼はニイッと目を剥いた。


「…そして、やはり死体には鬼に喰らわれた形跡はなく、ただ胸を掻きむしったような痕があった、と…」
「そうなんです。そしてこれもやはり他の犠牲者と同様、鬼を見た恐怖で顔が別人のように歪んでいたそうです」
牛車の中で、松田は水飴を舐めている竜崎に昨夜の事件を説明していた。
「小者はどうしました」
「生きてはいますが、頭がおかしくなっているようです。筆が、巻物が、とうわごとを繰り返すだけで」
「…それで?」
「…それだけです」
牛車がぎしぎしと揺れて、止まった。
「竜崎。やっぱりその、烏帽子もつけないで参内するつもりですか?」
おそるおそる松田は訪ねた。
竜崎は、と見ればくろぐろとした髪を風になびかせた蓬髪で平然としている。しかも、裸足だった。
「烏帽子をつけると祈祷力が40%減ですから」
もじもじと恥ずかしそうな松田を尻目に、竜崎は牛車を降りるとさっさと御内所へ向かった。


今上帝は、御年18の若者である。
まだ振り分け髪の童子であった頃から、その輝くばかりの美貌で夜空すら明るく照らす「月宮」ともてはやされた。蹴鞠・載り馬では宮中に並ぶ者とてなく、その博識は博士ですら舌を捲くほどであったという。
「竜崎か」
御簾の奥より発せられた声は、竜崎の予想を遙かに超えて涼やかだった。
「刑部卿の件、どう思う」
「鬼は、宮中に何らかの関わりがある者かと」
ぴたり、と扇子を使う音がやんだ。
「僕もそう思っていた。竜崎、鬼は人か」
「以前は人であった者、かもしれません」
竜崎は答えた。
「しかし、もはや人ではないでしょう」
御簾の内から再び扇子を使う音が微かに聞こえてきた。
「…策はあるのか」
はい、と竜崎は頷いた。


「いやー、僕緊張しましたよ。主上の声なんてきいたの初めてです…カッコよかったぁ…」
帰りの牛車の中、松田はまだ興奮から冷めやらぬ顔でうわずった声をあげた。
竜崎は黙ったまま膝を抱え、爪を噛んでいる。
松田は、ふと心配になって竜崎の顔を覗き込んだ。
「竜崎。ほんとうに策なんてあるんですか?」
「あります」
竜崎の黒い瞳がひた、と松田を見た。
「そのために、まず松田さんを捕まえます」
松田は首を傾げた。
「え、なんで僕が?」
「そうです松田さん。あなたは綺羅の名を騙り、罪のない女性を犯した上に殺害し、金品を奪って逃走した大悪人です」
「ちょ、ちょっと待ってください竜崎。僕はそんなひどいことした覚えは」
「なくても、やってもらいます」
竜崎はむずと松田の衣の裾を握った。


つづくぅ!





**********************
いやあ、思ったより楽しいです平安絵巻。
いろいろ調べて書くのが楽しい…書くより調べるのに時間かかった(馬鹿)
検非違使庁、ちゃんとありました^^ヨカッタ…
次、写経できる…かな?
2007'03.26.Mon

昨日のチャットで宿題が出ましたのでさわりをぼちぼち書いてみました。
テーマは「写経りうざき」です…

何も調べずに書いてるから嘘八百ですお恥ずかしい。
後できちんと調べて修正します…
け、けびいしちょうってあったかな…汗汗



******************************


奇妙な男について語ろう。
 平安の都を、風のように、雲のように飄々と漂って生きている男がいた。
 風に乗って流れる雲のように、何者にも捕らわれず、掴み所なく、大空を翔る。
 そんな男の話だ。
 名を、竜崎という。
 陰陽師である。


平安死帳絵巻
 巻一 陰陽師


「知ってますか竜崎」
供も連れず竜崎の庵にあがりこんできて開口一番そう言ったのは、平安京を守る検非違使の下っ端役人、松田であった。
「西京でまた鬼がでたんですよ」
「それを報告に来たんでしょう?松田さん」
竜崎はそう言って茶菓子を運んできた切り禿の童子の頭を撫でると、下がっていい、と頷いた。
「これはまた美味そうな菓子ですね」
松田はさっそく茶菓子に手を出したが、童子の姿が一瞬で消え、ひらひらと紙でできた人形になって舞い落ちる様を見て喉に茶菓子をつまらせた。
「り、竜崎、また…そんな式神?とやらを使って…」
「厭なら食べなくて結構ですよ?」
松田さんよりは式の方がよほど役に立ってくれるんですがね、と竜崎は言って松田から取り上げた水菓子を口に入れた。


平安の闇のなかに、ごく自然に怪かしの存在は息づいていた。
竜崎の仕事は、その闇に跋扈する物の怪、魑魅魍魎を祓うこと。
竜崎は賀茂氏の流れを組む歴代随一の陰陽師と呼ばれ、知る人ぞ知る高名な陰陽師であったが、普段は洛外に身を潜め、これまではその姿を知る者とてなかった。しかし、近頃都を騒がす奇怪な事件を解決するため、今上の帝より特に請われて都の外れに庵を結び鬼を追っていたのだった。


奇怪な、事件だった。
こんな奇妙な物の怪を竜崎は知らない。
通常、鬼は人を喰らうものと相場が決まっている。
しかしこの鬼は心の臓を止めるだけ。ひとすじの血すら流さない。
しかもこの鬼が襲うのは常に、金品を奪うために人を殺める盗っ人や、婦女子を好んで襲う野党のような輩ばかり。
義賊、のようにも見える。
すでに巷間ではこの鬼を「綺羅」と呼び、快哉を叫ぶことしきりとなっている。そればかりか、「綺羅」を末法の世を救うために神仏が権現したものと崇める者たちすら現れてきていた。

しかし、検非違使庁はこの事件に震撼した。
朝廷以外の場で、このような物の怪による裁きが行われることを許してはおけない。市井の噂も無視できない。朝廷と帝の権威に関わる問題だった。
時の帝は、検非違使庁に命じて陰陽師と協力し、即刻「綺羅」を捕らえるよう勅を発した。
検非違使庁別当・従三位夜神中納言は武を奉じる気骨ある漢として知られ、常日頃より物の怪など信じぬ、陰陽師など呪い師にすぎぬと思っていたが、心ならずも陰陽師竜崎と手を組み物の怪を追うこととなったのである。

「それで松田さん、調べてもらえましたか?」
「はい。検非違使庁で取り調べ中の罪人や、遠島流刑になった罪人で、突然死亡した者の数がここ数か月で激増しています」
やはり、と竜崎は親指をその薄い唇に押し当てた。

物の怪に殺されているのは、洛中を闊歩する罪人ばかりではない。すでに捕らえられた者、罪に処せられた者も含まれている。皆この短期間のうちに原因不明の死病で次々と亡くなっていた。

綺羅が狙うのは、罪人。
しかも、その対象は広く全国に及ぶ。
そのちからは、はかりしれない。
…しかし、何のために鬼が罪人を殺す?
しかも、屠った肉を喰らいもせず。


つづく
(な、長ェ!)

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